パートで遅刻・早退をしたら減給、罰金という制度は違法?
パートで働いている間には、子供をはじめとする家族の事情などで、どうしても遅刻・早退しないといけなくなることは、1回や2回はあるでしょう。それにもかかわらず、「遅刻・早退をしたら減給、罰金」という制度が事前に設けられているとしたら、それは法律上問題ないのでしょうか。パートでも、労働者の一人として理解しておくことをおすすめします。
就業規則に規定があれば制度自体は適法
10人以上の従業員がいれば、法律に従って会社のルール作成が義務づけられ、労働基準監督署に届け出ることになっています。このルールは一般的に「就業規則」と言い、パートで仕事を始めるときに渡されたり、会社でいつでも見られるファイルとして保管されたりしています。
基本的には、勤務時間や休憩・休日のこと、給与のこと、退職や解雇のことを主に構成されていますが、その他にも「遅刻・早退の際の減給、罰金」についての項目がある場合が考えられます。そこに遅刻や早退をした場合に、ペナルティが発生することが記載されていれば、法律の範囲内では減給も認められています。
あなたがパートで入社した会社では、このような就業規則を渡されたでしょうか。もし、10人に満たない少人数の会社であって就業規則がなかったとしても、労働をする際にはいろいろな規則がはっきりしていないと困ることがありますから、事前に働く条件をしっかりと確認しておくことは重要です。
もちろん、言い訳にならないような理由での遅刻・早退は社会人として論外ですが、それにしても、「遅刻1時間につき〇円の減給」などというルールが事前にあったとしたら、遅刻・早退の理由を問わず、一律にルールが該当してしまうことになります。
そうなると、実際に実働していない時間以上に収入が減ってしまうこともあり、働く側としては納得できないことになるでしょう。
労働基準法で認められた額以上の減給・罰金は違法
労働基準法には、働かない時間に賃金は発生しない(ノーワーク・ノーペイ)の原則がありますので、遅刻・早退をしたとしても働いた時間の賃金を支払わないとなれば、労働基準法違反となります。
例えば、労働者が10分遅刻したとして、50分の労働をしたにもかかわらず、30分の遅刻をしたとするようなルールを設けることは認められないのです。
労働基準法にも「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」という規定があるので、会社が勝手に働いた時間を変えることは認められていません。
また、「減給」は認められると説明しましたが、「労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」という規定もありますので、違約金や損害賠償をあらかじめ予定するようなものは認められません。例えば「備品を壊したら罰金1万円」などのルールは認められないことになります。
そして、多額の減給は認められておらず、具体的には以下のルールが設けられています。
(例えば1日あたり時給900円×5時間で勤務している場合、1日の平均賃金は4500円なので半額=2,250円)
2.減給の総額が1賃金支払期(例えば月払いの場合は1か月)における賃金の総額の10分の1を超えないこと
(上記で月20日働いている場合、総額が月給9万円なので上限は10分の1の9,000円)
就業規則にこの額以上の記載があったとしても、減給については労働基準法の決まりがありますし、減給や罰金を限度なく会社が決められるということではありません。金額を制定する際にも、労働者との合意が必要になっています。一方的な減給については会社に説明を求めても良いでしょう。
パートでも会社の規則を知って意識しておく
「パートだから、会社にお任せしていれば良い」「パートだから、会社のことはよく知らない」などと会社任せにしていると、例えば、遅刻・早退によって減給や罰金があっても、会社に言われたままで終わってしまいます。正しいのか、そうでないのかの判断ができないからです。
もともと、雇う側の使用者と雇われる側の労働者の力関係は違います。だからこそ、労働基準法やパートタイム労働法などによって労働者の権利が守られているわけですから、日頃から就業規則を意識しておきたいものです。
特にパートでは、せっかく入った会社だからという理由で受け身になりがちですが、パートも労働者の一人だという自覚を持ちましょう。
無断で退職してしまった場合の給料は?
遅刻どころか無断で欠勤、退職してしまった場合の給料についてはこちらの記事で解説しています。
主婦歓迎のパートであれば、介護や家事、子供の病気など主婦によくある事情の遅刻などは考慮してもらえやすい職場もあります。